知財関連コラム

特許実務雑感13

 複数の会社が共同研究開発した発明について、契約に基づき共同出願することがある。自社の技術の強みと他社技術の強みを補完しあってより良い製品を生み出す、というようにアライアンスが行われることは好ましいことである。
 しかしながら、A社とB社が共同で特許出願する場合、将来取得する特許権もA社とB社の共有ということになる。この特許権の共同所有が、将来互いの企業活動を縛り合う関係になるおそれがある、ことには注意が必要である。
 先ず、特許製品の実施(製造販売等)をするのは、特約がない限り、原則として自由に行える。よって、A社とB社は自由に特許製品を作って売ることができる。しかしながら、現実はそう甘くなく、大概のケースでは同業他社に売ってはならない、のような契約上の縛りがかかることが多い。例えばA社が最終製品を製造できない部品メーカーの場合、最終製品を製造できるB社が買ってくれない限り、特許製品を売ることができなくなる。それでは、開発費用が回収できなくなるおそれがある。
 よって、A社としては開発費用を回収する手立てを契約上担保する必要がある。例えば、競合他社への販売を一切禁止するのではなく、事前に互いの承認を得るようにする、などの可能性を残すか、B社が特許製品を製造する場合、A社製造の部品を優先的に購入するなど、何らかの工夫が必要であろう。さもなければ、実施能力に差がある会社どうしの場合、大企業よりに事が運んでしまい、研究開発型の中小企業の開発費用が回収できなくなるケースが想定されるからである。
 また、権利共有の場合、自社の持ち分を他社に譲渡したり、他社にライセンスしたりする場合、他の共有権利者の承諸を要する点も留意が必要である。

弁理士 平井 善博

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