知財関連コラム

特許実務雑感71

 令和3年度の特許法改正について説明します。(1)特許権等侵害訴訟等における第三者意見募集制度の導入:導入の背景には、サムスン社のFRAND宣言(合理的・非差別的な条件下で実施者へのライセンスを行うという宣言)された特許権に基づいてアップル社に対する差止請求権や損害賠償請求権の行使の可否が争われた事件があります。意見を提出できる者は、個人でも法人でも、法人でない社団、財団、日本に住所・居所を有さない外国人でも可能です。提出された意見は訴訟記録を構成しませんが、裁判所の判断の基礎となることを望む場合には書証として提出する必要があります。(2)権利等回復要件の緩和:出願人が一定期間に手続きを行なわないと権利を失う手続きとして、外国語書面出願の翻訳文提出、国内優先権の優先期間出願審査請求、特許料の追納による特許権の回復、外国語でされた国際特許出願の翻訳文提出等があります。背景には、従来は相当な注意を払ったにもかかわらず手続き期間を遵守できなかったことが条件となっていましたが、この条件が欧米諸国に比べて厳しいとの批判がありました。権利回復を求める要件として、遅滞の理由が故意でなかったことを主張すれば足りることになりました。令和5年4月1日以降に上記手続期間が満了する場合、うっかりして手続期間を徒過した場合でも、期間経過後1年以内であって、期間徒過に気づいた日から2か月以内回復手数料を支払えば手続きを回復することができます。従来は優先期間や審査請求期間などを徒過した場合は救済されませんでしたが、条件が緩和されます。但し、回復手数料は、特許に関しては21万2千百円と高額ですので、原則としては手続期間を遵守する方が無難です。

弁理士 平井 善博

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