知財関連コラム

特許実務雑感84

 ここまで特許制度全般についてお話してきましたが、近年の出願傾向として国内のみならず外国出願を行うクライアントさんが増えたことがあげられる。ビジネスの形態がグローバル化し、市場が世界各国に拡大していること、外国企業とのアライアンス関係の増加、外国競合企業の存在などの背景があると思われる。発明が日本のみならず他国にも出願され、それなりの投資をすることを考えると、いかなる従来技術をもとにその課題をどのように解決したかという、明細書に記載する事項が極めて重要になってくる。よって、出願に先立って行う先行技術調査が大切であり、特許庁のHPからアクセス可能な無料のJ-platpatJPnet等の有料の検索サイトでも結構ですが、先行技術調査の精度で権利範囲が変わってくることが考えられる。実際、同じ発明について日本を含めて他国にも出願すると、審査の結果、拒絶理由として共通の引用文献が指摘されるケースが多いですが、国ごとに異なる引用文献が引用される場合もあります。引用文献が共通していれば、同じ補正内容で権利範囲が確定する場合もありますが、各国審査官による同一の引用文献についての評価や解釈がばらついて必ずしも同じ権利範囲になるとは限りません。近年は外国の審査官も他国出願の審査経過データを閲覧しているのか、同じ引用文献を引用することが増えています。それならば、1か国目の審査結果を他国審査の結果とし、重複した審査を避ければよいと思われますが、国際的な統一法が存在しない限りは、そのような扱いは期待できません。出願国ごとの特許制度の特徴を把握して、可能な限りカスタマイズした権利範囲を考える時代になっているような気がします。

弁理士 平井 善博

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