知財関連コラム

特許実務雑感72

 令和3年度の特許法改正の続きを説明します。(3)訂正審判等における通常実施権者の承諾要件の廃止:複数の企業が特許権を持ち寄って参加企業に通常実施権を許諾するパテントプールが存在する場合、多数の通常実施権者の承諾が得られ難い現状や欧米の法律には通常実施権者の承諾不要が多いこと、仮に特許権が訂正されても通常実施権者の実施継続は妨げられないことが背景としてあります。(4)特許権、実用新案権、意匠権の放棄における通常実施権者の承諾要件の廃止:通常実施権者の増加により全ての通常実施権者の承諾を得ることが困難なこと、特許権者等に過度な負担となることが背景にあります。尚、当事者間の契約により、訂正審判の請求に通常実施権者の承諾や権利放棄の際の承諾に必要性について合意するのは自由です。合意に反する行為は、民法の債務不履行に該当し、損害賠償請求の対象となります。*注意すべきは、商標権の放棄には通常使用権者の承諾が必要となります。理由は、商標権が承諾なしに放棄されると、誰もが使用可能な状態となるため、商品役務の出所混同のおそれが生じ通常使用権者の信用が毀損されること、他人が同一・類似の商標につき権利取得すると、通常使用権者であった者が権利侵害として訴えられるおそれがあるためです。(5)海外からの模倣品流入に対する規制強化:海外の事業者が日本国内の個人との取引で模倣品を郵送等により日本国内に持ち込む行為(個人輸入)は、意匠法、商標法の「輸入」に含まれる。模倣品を個人が使用する目的で輸入する行為は非侵害という理由で模倣品が国内に流入するケースが後を絶たないことが背景にあります。

弁理士 平井 善博

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