知財Q&Aコーナー(69)
Q:改良発明を出願する際の時期的な制限について教えて下さい。
A:既に出願されている基礎的な発明に基づいて改良発明がなされるケースが少なくありませんが、出願するに当たっては時期的な面において考慮すべき重要事項があります。
改良発明を効果的に保護する方法の一つに「国内優先権」を主張した出願が挙げられます。以前のこのコーナーでも触れましたが、「国内優先権」という制度は、基本的な発明を出願した後に、その発明と、後から改良を加えた発明とを包括的に一つにまとめて、新たな特許出願として提出することができる制度です。この制度を利用することにより、開発の進行に沿って順次得られる技術成果に対して、漏れのない形で権利化を図り、確実に保護することが可能となります。ただし、国内優先権を主張する出願は、基礎出願から1年以内にしなければ効力を生じません。
それでは、基礎出願から1年が経過してしまい、国内優先権を主張できない時期となっている場合にはどのような対応を採り得るでしょうか。
そのような場合には、遅くとも基礎出願から1年6月以内に出願をすることが重要となります。理由として、1年6月が経過した時点で自らの基礎出願が公開されることとなるため、その内容を引例とする拒絶通知を受ける可能性が生じるためです。すわなち、国内優先権の効果は得られないまでも、基礎出願の公開前であれば、自らの基礎出願を引例とする拒絶を回避しつつ改良発明を権利化する方法が採れます。
ただし、基礎出願の公開によって他人の権利化が阻止されるという効果を見込むこともできますので、改良発明の内容次第では、あえて出願を行わないという選択肢も考えられます。
弁理士 岡村 隆志