知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(10)

Q:他人の特許権を侵害すると、どのような処罰を受けることになりますか?

A:他人の特許権を侵害した場合には、次のような民事上・刑事上の法的措置を適用されることが考えられます。

【民事上の措置】

①差止請求
侵害行為の差止めを請求されます。併せて、侵害行為を成した製品の廃棄や設備の除却等も請求されます。

②損害賠償請求
故意・過失による侵害行為であれば、相手に生じた損害の賠償を請求されます。

③不当利得返還請求
侵害行為により不当な財産的利得を得た場合に、特許権者の損失を限度として、その利得の返還を請求されます。

④信用回復措置請求
侵害行為により相手の業務上の信用を害した場合には、新聞の謝罪広告等によって、信用回復に必要な措置を採るよう請求されます。

【刑事罰】

侵害罪
特許権を侵害した者は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、又はその両方が科されます。なお、侵害罪は非親告罪となっていますので、告訴がなくても公訴される場合があります。

②両罰規定
法人の従業員等が業務に関し、侵害行為をした場合には、その行為者だけでなく、法人にも3億円以下の罰金刑が科されます。

 以上の措置は、特許権を侵害した場合に必ず適用されるというものではありません。しかし、特許権に代表される知的財産権は、他の財産権に比べて侵害が容易であることから、このように厳しい措置を設けて、侵害防止のための保護が図られています。

 最近では、競合他社との差別化を図り、自社ビジネスの優位性を確保するために、今まで特許取得に消極的であった企業においても特許重視に転ずる姿勢が多く見受けられます。そのため、特許権を取得することのみでなく、他人の特許権を侵害しないことにも十分な注意を払う必要があります。

弁理士 岡村 隆志

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