知財関連コラム

特許実務雑感9

 今回から、特許を取得するための様々な要件についてお話しする。特許を受ける権利は、いつ発生するかといえば、発明を完成したときである。即ち、何らかの技術的課題を解決する手段を考え出したときに発明は生まれる。願書には発明者及び出願人を記載する必要がある。発明者は一人の場合もあるが、複数人で完成させ或いは会社同士アライアンスを行って共有となる場合もある。
 発明行為は自然人固有の能力の発揮の産物であると考えられ、特許を受ける権利は、発明者に原始的に帰属する。よって、多くの場合、発明者が特許を受ける権利を有しており、発明者及び出願人は同一となるケースが多いが、出願人は会社名(法人名)で行われることが多い。これは、従業者が有する特許を受ける権利を会社(法人)に譲渡した結果、会社が出願人となっているのである。この譲渡手続きが曖味になっているため紛争の種となるケースがある。有名なところでは青色発光ダイオードを発明された中村修二先生の裁判例がある。
 発明にはそれが生まれた背景から、以下の3つのカテゴリとして位置付けることができる。発明者が自由になした自由発明、会社に属する従業者がその業務範囲に属する発明をなした業務発明、業務発明であって研究開発を期待されている者が職務に基づいてなした職務発明、以上の3つが存在する。上記自由発明については基本的には発明者が出願人となる場合が多いが、業務発明や職務発明については社内規定(就業規則等)により会社に有償で譲渡すると規定されている場合もある。後の無用な紛争を避けるためには、職務発明規程を整備されることをお勧めする次第である。職務発明の場合、従業者の発明完成までに会社は資金提供や研究設備等の提供を通じて一定の貢献をしており、従業者が特許を取得しても会社は通常実施権を有する。

弁理士 平井 善博

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