知財関連コラム

特許実務雑感4

 特許法上、第2条1項に発明の定義がなされており「自然法則を利用した技術的思想の創作であって高度のもの」と規定されている。わかり易く言いかえれば、自然界にある経験則に従ってある技術的課題を解決するために生み出された解決手段(技術的工夫)であって、高度と思われるもの、となる。
 例えば、「私は画商をしており、顧客から絶大な信用があり私に一定期間で絵を預けて頂ければ必ず利子をつけてお返しします」、という取引方法を特許にできませんか?と問われたとする。これが特許法上の発明に該当するだろうか?こんなときには、上述した発明の定義が役に立つ。このアイデアに果たして自然法則の利用はあるだろうか?解決すべき技術的課題はなんだろうか?御存じの方も多いと思われるが、人為的取り決め(人と人との約束等)、ゲーム法則(的に当てたら〇点等)、経済法則(1年預金すると利息が〇%等)などのアイデア自体には独創性は認めても、自然法則の利用とは認められられない。
 また、技術とは似て非なるものに技量がある。よくいわれるのがプロレスの技のかけ方、プロ野球投手の変化球の投げ方等である。ダルビッシュ投手の投球フォームはまねることはできるが、同じ変化をする投球は一般的にはできない。人から人へ客観的に伝承できる技術とは一線を画する。このプロレス技をかけると相手に致命傷を与えて、勝利に導くことができる、などとストーリ性は十分であるが、残念ながら技術には該当しない。
 高度であると定義されているがあくまで主観の問題であり、これが特に問われることはない。発明であっても簡易な構成はありうるし、簡易な構成であるからといって登録されないというわけではない。あくまで先行技術との対比において決する問題である。

弁理士 平井 善博

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