知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(53)

Q:退職後に発明をした場合、権利は誰に帰属するのでしょうか?

A:特許法には職務上行った発明について定めた規定があります(特許法35条)。この規定において、先ず、「職務発明」とは、「その発明をするに至った行為が従業者の現在又は過去の職務に属する発明をいう」(一部簡略化しています)と定義しています。さらに、その取扱いについて、「従業者は、使用者に特許を受ける権利を取得(承継)させたときは、“相当の利益”を受ける権利を有する」との定めを設けています。
 したがって、在職中の職務に無関係な発明であれば、当然、発明者本人の権利となりますが、問題となるのは、その発明が過去の職務に属する場合です。
 これについては、特許法の職務発明に関する規定中に明文はありませんが、職務発明として、使用者に一定の権利が生じるのは、現在も従業者等としてその使用者と雇用関係にある場合における過去の職務のみであって、雇用関係が終了してしまった場合の過去の職務は対象にならないと解されています。つまり、原則として、退職後の発明に関する権利は、発明者のみに帰属することになります。
 しかしながら、発明が完成する直前に退職した場合や、在職期間が比較的長く、その間に体得した知識経験が発明完成に大きな役割を果たしている等の特段の事情がある場合には、使用者側に一切の権利が生じないとすることは、公平の観点から妥当ではなく、特許法に抵触しない範囲内で合理的な契約を結んで処理すべきであろうとする学説が有力です。
(参考文献:特許法概説/吉藤幸朔著)

弁理士 岡村 隆志

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