知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標  ありふれた氏の登録可能性

 ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章は、識別性が無いものとして登録できません(商標法314号)。
 審査ではありふれた氏であるとして拒絶になったものの、拒絶査定不服審判においてありふれた氏ではないと判断されて登録になった例を説明します。
 ある企業が商標「ミタ」を出願したところ、審査では「「ミタ」はありふれた氏である「三田」をカタカナで表したものと容易に理解される」、と指摘され拒絶査定になりました。
 しかし、この企業が拒絶査定に不服であるとして審判請求したところ、審判官は「姓名分布&ランキング」、「名字由来net」、「全国の苗字(名字)12万種」、「日本人の名字ランキング」の4つのウェブサイトを調査し、これらのウェブサイトからすると、氏の一つである「三田」は、全国的にみてもその数はさほど多いとはいえず、他の氏とする者の数との比較による順位もさほど高いとはいえないものである。そうすると、氏の一つである「三田」は、氏としてありふれたものとはいえないと判断するのが相当である、と判断しました。
 審査基準では、50音別電話帳(東京版)で相当数見つかればありふれた氏であると認定されるようですが、どの程度見つかればありふれた氏であるか明確な基準はわかりません。
 ちなみに、上記の審判においては、各ウェブサイトで「三田」が全国で645番目~683番目に多い氏であるというのを確認してありふれた氏ではないと判断しているため、どうしても苗字と認識されそうな商標を登録したい場合には、これらのウェブサイトを参照して、少なくとも「三田」よりも少ないようであれば登録可能性があると考えてよいと思います。

弁理士 傳田 正彦

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