知財関連コラム

特許実務雑感48

 特許出願はすべて原則として出願から1年6月経過後に出願内容が公開されます。所謂、出願公開制度を採用している。なぜ出願内容を公開するかというと、本来秘匿したいと思われる発明を公開する代償として一定期間独占を認めるという制度趣旨からである。また、同一技術の重複投資、重複研究、重複出願等の弊害を防いで、技術の累積的進歩を図るためである。原則としたのは、早期公開請求も可能だからです。出願公開は、第三者に出願内容を知らせるものであるため、模倣盗用の機会を与えるおそれもあります。そこで、出願公開から特許登録までの期間の不利益を補償金として補填する補償金請求権が認められ、この権利を早期に発生させるため、早期公開請求も認められています。早期公開請求は取り下げることはできません。ちなみに、複数の関連技術を出願する場合、早期公開は行わないほうが良いです。なぜなら、早期に自社の関連技術が公開されると、後の出願に審査において先行技術文献として引用される可能性が高く、これに対する特許要件(特に進歩性)がクリアできないと、拒絶に追い込まれる可能が高いためです。同様な事態は、実用新案登録出願を行なった後、関連技術について特許出願する場合にも起こり得えます。特許戦略としては、出願から1年6月という期間は、先の出願が公開される前に関連する技術を出願するためのリードタイムと考えた方がよいでしょう。尚、国内優先権主張出願についての出願公開は、先の出願から1年6月経過後に公開されます。また、出願後早期に審査請求をして先に特許掲載公報が発行された場合は、発明公開の目的は達成されるため、公開公報は発行されません。

弁理士 平井 善博

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