知財関連コラム

特許実務雑感44

 特許法と実用新案法は共に技術的創作を保護する点で共通し何故併存するのか分からないという疑問をお持ちの方もいらっしゃると思われますので、今回は実用新案法の存在意義について説明します。いくつかの理由がありますが、最も大きな理由は、沿革的な理由によります。戦後我国の法律がいかにして整備されたかを考えるとよいでしょう。答えはドイツの法律に倣ったことが大きいと言えます。ドイツでは、発明に比べて技術レベルがさほど高くない日用品関連の小発明を、型(Utility Model)として保護していました。これを日本では考案と称して特許法とは別に実用新案法で保護することしました。また、小発明を含む全ての発明を特許法で保護するとすれば、発明の技術水準が低下します。更には、時代背景として、中小企業の保護育成を図るため、小発明を積極的に保護しようという意図もありました。かつて実用新案法は特許法と同様に審査主義を採用し審査を経て権利付与されており多くの利用がありました。平成6年に無審査登録主義に移行してから、権利としての信頼性に欠けるとしてその利用度が低下しているのが実態です。しかしながら、ライフサイクルの短い商品や身近な創意工夫を保護するには、簡易な制度であり、イニシャルコストも低いため、資金に余裕のないクライアントさんは利用するのも一考かと思われます。尚、実用新案登録出願すると半年以内に登録され、出願時に3年分の登録料納付が登録の条件ですので、最低でも3年は権利が存続し、審査を受けたければ特許出願に乗り換えることもできます。手続きの簡易さとコストを抑えるため実用新案登録出願を利用するケースが多いですが、先行技術調査は特許と同様であるため、重要なものは特許出願に乗り換えることも必要かと思われます。

弁理士 平井 善博

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