知財関連コラム

特許実務雑感42

 今回は令和2年4月1日付で法改正が行われた意匠法の概要について説明致します。(1)意匠の定義変更:従前、意匠は動産である物品(工業製品)の美的外観と定義され、物品と離れた意匠は存在しなかったが、新たに「建築物」(不動産)と「画像」(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果表示されるもの)が追加された。住宅、競技場、橋梁等(不動産)、ウェブサイトの画像(操作画像)、ディスプレイに表示された画像(表示画像)等も登録対象となる。(2)内装の意匠の保護:店舗、事務所その他の施設の内部の設備や装飾を構成する物品、建築物、画像の意匠は、内装全体として統一的な美観を起こさせることを条件として登録対象となる。これらは新たな保護対象となるので、ウェブデザイナーや建築家、建設業者等の関係者にとっては、模倣盗用対策として意匠権による保護の必要性について考えてみるとよいでしょう。(3)関連意匠制度の拡充:1)関連意匠制度は自己の出願意匠又は登録意匠(本意匠)に類似する意匠を保護する制度です。従前は、本意匠に類似するバリエーションの意匠のみが保護対象であり、関連意匠のみに類似する意匠は、保護されませんでした。改正後は関連意匠のみに類似する派生的に創作された意匠も関連意匠として保護されることになります。2)関連意匠の出願期間は、従前は本意匠の意匠公報発行日前までに限られていました。改正後は最初の本意匠(基礎意匠)の出願日から10年を経過する前まで出願することができます。関連意匠の意匠権の存続期間は、最大基礎意匠の出願日から25年で終了します。時代に合わせてバリエーションが変化するデザインを広く保護するのに有効と思われます。

弁理士 平井 善博

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