知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(36)

Q:一旦、特許出願を行った発明を出願後に補正して、特許請求の範囲が当初のものと異なってしまった場合には、いつの時点が「出願日」になるのでしょうか?

A:特許出願の書面、すなわち明細書は当初から完全であることが望ましいですが、やはり完全を期し難い場合があります。また、審査を受けた結果として、修正を要する場合もあります。このような理由から、特許出願を行った後でも、明細書の内容を補正することが認められています。具体的な手続の方法としては、補正内容を記載した「手続補正書」という書面を特許庁へ提出することによって行います。
 では、一旦、特許出願を行った発明を出願後に補正して、特許請求の範囲が当初のものと異なってしまった場合には、いつの時点が「出願日」になるのでしょうか。
 結論から言いますと、明細書の内容を補正したとしても、その効果は出願時点まで遡ります。したがって、原則として出願日が繰り下がるというようなことはありません。
 しかしながら、当初の明細書に記載されていなかった発明を、後から補正によって自由に追加できるとすれば、先願主義に反し、著しく法的安定性を害してしまいます。そのため、補正が可能な事項については制限が課せられています(提出時期の制限もあります)。
 具体的には、願書に最初に添付した明細書・図面に記載してある事項の範囲内でしか補正は認められません。
 例えば、出願当初において権利を請求していなかった事項であっても、明細書中の何れかの部分に記載がある限り、後から特許請求の範囲に追加することが可能です。これとは逆に、出願時には全く記載が無かった新規事項を、後から特許請求の範囲に追加した場合には拒絶理由となってしまいます。

弁理士 岡村 隆志

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