知財関連コラム

特許実務雑感35

 特許要件違反の拒絶理由通知を受けた場合、権利化を図るためには意見書及び補正書を提出する場合が多い。意見書は反論する書面であり、補正書は、特許請求の範囲や明細書等を手直しする書面です。記載不備を拒絶理由とする場合、稀に補正せずに、意見書のみで対応する場合もあります。例えばある物の発明の構成を解釈論で明らかにするため、意見書にて引用文献との相違を具体的な部材名を用いて述べます。これで特許になれば、権利者は事後にこの解釈に反する主張はできないことになります。新規性欠如、29条の2該当、先願性欠如に関する拒絶理由が通知された場合には、特許請求の範囲に記載された発明と、引用文献に記載された発明との同一性が問題となっており、補正により非同一発明となるように補正すれば比較的容易に回避することができます。実務上は、進歩性欠如に関する拒絶理由が最も多く、これを回避するためには、補正書及び意見書の提出が欠かせない。特に引用文献の精度によっては、如何に補正するかで、権利化できるか否かが決まってしまうことが多い。もちろん、引用文献に記載がない新たな限定要素が開示されていれば比較的容易であるが、構成要件は共通しており、課題も共通しているとなると、更に下位概念に限定せざるを得ない場合にはクライアントの同意も必要としどこまで具現化するか悩む場合が多い。余計な限定要素をいれたことで、後になって後悔することも多い。或いはそこまで限定するなら権利化は不要であると、断られるケースもある。補正できる要素は、出願当初明細書及び図面に開示された範囲及び当初明細書等に当然記載されているとみなせる技術常識に関する事項である。要は新規事項追加でないことが絶対条件である。

弁理士 平井 善博

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