知財関連コラム

特許実務雑感30

 次に2019年7月1日に施行された不正競争防止法改正について説明する。1番目は「限定提供データ」の不正取得・使用等に関する民事措置の新設である。「限定提供データ」には1)限定提供性2)電磁的管理性(ID,パスワード等)3)相当蓄積性が要求され、オープンなデータは除かれる。限定提供データとしては、例えば、自動走行用地図データ、装置の稼働データ、消費動向データ等が該当する。保護の理由としては、IoTAIの技術開発と関連し、創作性に乏しい情報であるが、相当量蓄積されることで経済的な利用価値を生み出し、かつ電磁的に複製が容易という実情がある。新設規定は、限定提供データ保有者A⇒アクセス権のない者B及びアクセス権のある者C⇒B若しくはCから取得時悪意転得者D及び取得時善意転得者Eが存在する事実関係において、1)アクセス権のない者Bによる限定提供データの取得・使用・開示(2111号)、2)取得時悪意転得者Dによる(Bの不正取得を知りながら)限定提供データの取得・使用・開示(2112号)、3)取得時善意転得者E(Bの不正取得を事後的に知って)による限定提供データの開示(2113号)、4)アクセス権のある者Cの図利加害目的の使用(横領・背任態様に限る)・開示(2114号)、5)取得時悪意転得者Dによる(Cの不正開示を知りながら)限定提供データの取得・使用・開示(2115号)、6)取得時善意転得者Eによる(Cの不正開示を事後的に知って)開示(2116号)、以上の行為が対象となる。上記「限定提供データ」の不正取得・使用等に対して民事的救済措置(差止・損害賠償等)が適用されるが、刑事責任は問われない。

弁理士 平井 善博

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