知財関連コラム

特許実務雑感69

 今回は、訴えられる被疑侵害者の対応について説明します。いきなり訴状が送られて来ることは少なく、通常は事前に内容証明郵便で警告書ないしは通知書の類が届きます。この警告書等には通常特許番号や特許請求の範囲の記載があり、対象となる被疑者の製品についての記載があります。私の経験では、被疑者のどの製品が侵害なのか製品名や型番が不明なものがあります。権利者が侵害の事実を主張立証する責任があるため、これを待ってもよいです。あまりに無謀な主張は無視もありです。対応する場合には、以下の検討をお勧めします。先ずは侵害論(文言侵害)が成立するか否かの検討です。被疑者製品と特許請求の範囲の文言のあてはめを行い、必要に応じて明細書図面を参照しながら検討し、一部の要件でも該当しなければ、非侵害と判断することができます。この場合、否認と言ってその旨を権利者に回答します。但し、間接侵害と均等侵害の該当性についても一応検討します。特許の成立過程で提出された意見書や補正書の内容を検討します。意識的除外に該当する場合或いは意識的限定から外れる場合には非侵害と言えますし、文言の解釈を述べている場合にはその解釈に当てはまらなければ非侵害と言えます。文言侵害に該当しそうな場合には、抗弁として正当な理由正当な権原の有無を検討します。正当な権原には、例えば先使用権があり特許出願の際に実施していたことを主張します。また正当な理由としては、サブライセンス条項に基づいてライセンシーより許諾を受けた等の事実があります。被疑者製品が自由技術公知技術に該当する場合にはそれを主張します。以上の抗弁ができない場合には、特許権に無効理由が存在するか調査検討することになります。

弁理士 平井 善博

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