知財関連コラム

特許実務雑感64

 侵害論を展開する中で、権利者が直接侵害を争っていたかと思うと、請求の趣旨を変更して間接侵害を争ってくる場合があります。本来直接侵害には該当しないが特許発明の主要な部分を実施するかまたは、課題を解決するために重要な部分を実施されると特許発明の効力が著しく減殺されます。間接侵害は、これらの予備的行為を防ぐため、例外的に特許権の効力を拡張して特許権者を保護するものであるため、慎重な運用が求められる。間接侵害が成立する否かは大きく2つのケースがあり、1つ目は特許製品(特許方法)のなかの専用品(例えばエンジンに必要な特有形状のピストン等)を実施する場合、2つ目は、特許製品(特許方法)の主要な部品を実施する場合(小型化を実現するコンプレッサーに必要なシリンダ等)がある。立証方法には、2つの考え方があり、従属説と独立説が存在する。従属説は、間接侵害の前提として直接侵害が成立するという考え方である。実施品を製品に組み込んだ状態で直接侵害が成立するのだから、その一部である実施品が専用品若しくは課題解決のために重要な部品である場合には、間接侵害が成立するというものである。独立説は、直接侵害に成立の有無にかかわらず、実施品が専用品若しくは課題解決のために重要な部品である場合には、間接侵害が成立するというものである。間接侵害については判例が少なく、いずれの説が有力かわかり難い面があります。米国は従属説を採用しているようです。筆者が経験したのも1件のみであり、しかも結論もみないまま相手方が訴訟を取り下げたので、不完全燃焼で終わった感があります。間接侵害は例外規定であるため、侵害論として主張する場合は、成立要件に慎重な検討が必要でしょう。

弁理士 平井 善博

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