知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標  他人の氏名又は名称

 他人の氏名又は名称等に該当する商標は、商標法418号違反となり商標登録できません。もう少し細かく説明しますと、他人の肖像、他人の氏名、他人の名称、他人の著名な雅号、他人の著名な芸名、他人の著名な筆名、これらの著名な略称を含む商標は登録できません。ただし、その他人の承諾を得ていれば登録可能です。
 ここでいう他人とは現存している者であり、自然人、法人、権利能力が無い社団も含まれます。
 もし、出願人が自分の氏名や名称を出願したとしても、他人の氏名や名称にも該当するのであれば、他人の承諾を得ない限り登録できません。
 1つ事例を話しますと、株式会社大勝軒が、創業者の氏名である「山岸一雄」を商標登録しようと出願しました。当時創業者は存命であり、当然に創業者の承諾を得て出願されたものです。しかし、特許庁では、NTT東日本ハローページにて20名の「山岸一雄」を見出し、418号違反で拒絶しました。
 出願人は、つけ麺店の創業者としての大勝軒の山岸一雄氏の知名度は高く、日本全国においてつけ麺業界だけでなく広く世間一般の人々に知られており、つけ麺に関連する本願の指定商品及び指定役務との関係においてつけ麺と強く結びついた同氏の著名性を考慮すれば本願商標に接する需要者はつけ麺の店主として著名な山岸一雄氏を想起しそれ以外の同姓同名の山岸一雄氏のことは全く想起しないとし、20名の「山岸一雄」氏からの承諾を得ることなく反論しました。
 しかし特許庁は、商標法4条1項8号は、その他人の人格的利益を保護することにあるので、20名の「山岸一雄」氏からの承諾を得ていない以上は登録できないとしました。

弁理士 傳田 正彦

トップへ戻る