知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(55)

Q:特許要件として挙げられている「反社会的な発明」とはどのようなものでしょうか?
A:発明が特許を受けるために必要な条件を「特許要件」と言います。特許法において、この「特許要件」に関する規定が幾つか設けられています。代表的なものには、よく耳にする「新規性(発明がすでに知られたものでないこと)」、「進歩性(すでに知られた発明に基づいて容易に成し得るものでないこと)」があります。ここで、その中の一つとして、特許法第32条に「特許を受けることができない発明」を定めた規定があります。
 具体的な規定内容として、「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、(中略)特許を受けることができない。」と記載されています。
 この規定を見る限り、規定中において「反社会的な発明」という表現が直接用いられている訳ではありませんが、同規定における「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明」の一つの類型あるいは言い換えであると捉えることができるでしょう。
 別の表現を用いれば、「反社会的な発明」とは、国家社会の一般的な道徳や倫理に反する発明や、国民の健康に害を与えるおそれのある発明であると言えます。
 このような発明は、他の特許要件を全て充足している場合であっても、すなわち、産業として実施できる、新規性を備えている、進歩性を備えている等であったとしても、特許を受けることはできません。
 「反社会的な発明」に該当するものとして、特許法の解説書等によく挙げられている具体例には、「紙幣偽造機械」、「金塊密輸用衣服」、「麻薬吸引器具」といったものがあります。
(参考文献:特許法概説/吉藤幸朔著)

弁理士 岡村 隆志

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