知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(51)

Q:特許発明の実施許諾をした相手が、その特許権は無効だと主張してきたらどうすればよいでしょうか?

A:実施許諾を受けた実施権者といえども、対象となる特許権に対して無効審判を請求する権利を有しています。そのため、実施権者が、特許権者に対して当該特許権の無効審判を請求するといった事態が、実際上、起きる可能性があります。したがって、この問題は、特許権者が実施権者からの特許無効審判の請求を回避するためにはどのような対応をとるのがよいかということに帰着すると言えます。
 先ずは、特許権者が実施権者に対して、「特許権の有効性について争ってはならない」という契約を結べばよいのではないかという考えが浮かぶと思います。そのような内容の契約(義務)のことを、一般に法律用語で「不争義務」と呼んでいます。
 しかしながら、特許権者が実施権者に対して「不争義務」を課す行為は、実は、独占禁止法において「不公正な取引方法に該当する」との指針が示されています。つまり、法律上、問題となる契約内容になってしまうということです。
 それでは、一体どうすればよいのかということになりますが、例えば、実施権者と結ぶ契約の内容を、「特許権の有効性について争ってはならない」と記載するのではなく、「実施権者が許諾された特許権の有効性を争った場合には、特許権者は当該実施許諾契約を解除できる」と記載する対応方法がよく用いられています。このような内容の契約であれば、独占禁止法における不公正な取引方法に該当することなく、無効審判を請求されないように牽制することができると考えられます。

弁理士 岡村 隆志

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