知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標  公序良俗違反(著名な家門)

 A社が商標「ハプスブルク」を出願したところ、審査官は「本願商標は『中部ヨーロッパを中心とする広大な地域に君臨した家門。ヨーロッパで最も由緒ある家柄の一つ』である『ハプスブルク家』を認識させる『ハプスブルク』の文字を標準文字で表してなるものであるから、このような商標を一法人が営利目的において使用することは、該家の権威と尊厳を損ねるおそれがあり、ひいては国際間の信義則を保つ観点から公序良俗に反するとして拒絶しました。
 A社はこれを不服として拒絶査定不服審判を請求したところ、審判では以下のような判断がなされ、最終的に商標「ハプスブルク」は登録になりました。
 審判の見解によると、「オーストリア帝国の皇帝としての地位が消滅してから1世紀以上経過した現代において、「ハプスブルク家」の王位等の地位を継承すべき特定の系譜が存在するとはいえず、また「ハプスブルク」の名称の統制や商標を管理する公的な団体は存在せず「ハプスブルク」の名称を商標として採択することが公益上妥当でないとする特段の事情を発見することはできなかった。そうすると、A社が本願商標をその指定役務について使用をしたときに、かつての王家である「ハプスブルク家」を想起させる場合があるとしても、同家の権威や尊厳を損なう具体的な事情があるとはいい難く、また特定の国の国民の感情を害し、国際信義に反するとまではいえない。」ということです。
 一般的にはこのような著名な家門は拒絶されるはずですから、本件のように登録になった「ハプスブルク」はあくまで例外的なものと考えた方がよさそうです。

弁理士 傳田 正彦

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