知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標  識別性の無い商標の例

 商品の品質を表したものにすぎない商標は、識別性が無いとして拒絶されますが、このような商標の事例を紹介します。
 A社は商標「プッシュ水栓」を標準文字で商標登録出願しました。指定商品は第11類の「便所ユニット、浴室ユニット、水道用栓・・・便器、和式便器用いす・・等」です。特許庁は、この「プッシュ水栓」を識別性が無いこと、及び品質の誤認を生じるおそれがあることを理由にして拒絶査定にしました。
 特許庁によると、プッシュは押すことを意味し、水栓は水道の水を出したり止めたりする栓と弁の総称の意味を有するから、「プッシュ水栓」は構成全体として、「押すことで水道の水を出したり止めたりする栓と弁の総称」の意味合いを容易に理解させるものである、と指摘しました。そして、本願商標「プッシュ水栓」をその指定商品中「押すことで水道の水を出したり止めたりする水道用栓、水道の水を出したり止めたりする栓と弁を有する便所ユニット・浴室ユニット・・・等」に使用しても、単に商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標を前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから商標法第4条第1項第16号に該当するとしました。
 A社は、これを不服として拒絶査定不服審判を請求しましたが、同様の理由により拒絶が確定しました。
 識別性が無いという理由で拒絶された場合には、この商標を使用できないというわけではありません。誰も商標登録ができず、また誰もが使用できる商標として認識されているということになります。

弁理士 傳田 正彦

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