知財関連コラム

特許実務雑感47

 特許出願をしたらすべて審査されるかというと、答えはノーです。即ち、権利化への意思表示した出願のみを審査する出願審査請求制度を採用しています。特許出願の中には技術を公開して他人の権利化を阻止できれば足りる防衛的なものも含まれるからです。出願審査請求は出願から3年以内に請求することができ、出願と同時に行ってもよいし、3年経過ギリギリで請求してもよいです。通常は、出願から1年くらいは様子を見ることが多い。後に国内優先権主張すると、先の出願が取下擬制されて審査請求費用が無駄になるからです。また出願から3年経過すると出願取下擬制されますが、出願公開されているため他人による同一技術の権利化は阻止できます。出願審査請求は、審査開始のきっかけであり、何人も請求できます。出願審査請求すると、概ね11か月以内に審査結果(特許査定通知又は拒絶理由通知)が通知されます。もっと早く結果を知りたければ、早期審査請求を行えば、請求から早ければ2か月程度で審査結果が通知されます。一定規模の中小企業や、外国関連出願、実施関連出願等の理由があれば、無条件で早期審査の対象となります。この制度を有効に使えば、出願から1年以内に特許査定を勝ち取ることができるうえに、外国で権利化する場合、先ず国内で権利化を図り、その権利化された内容で優先権主張して外国出願を行うことで、外国においても審査官通知(拒絶)の機会を減らしつつ権利化できるという使い方ができます。外国では、国内審査とは異なる文献が引用される可能性もありますが、権利化できないケースは少ないと思われます。尚、審査請求費用は、20194月以降に全ての個人事業者・小規模事業者を対象に、一律に原則として半減ないしは1/3とする改正がなされています。

弁理士 平井 善博

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