知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(39)

Q:「刊行物に記載された発明」は特許を受けられないと聞きましたが、この「刊行物」とはどのようなものを指すのでしょうか?

A:特許法において、「頒布された刊行物に記載された発明は特許を受けることができない」旨が規定されています。ここで、「刊行物」とは、「公衆に対し、頒布により公開を目的として複製された文書・図画等の情報伝達媒体」をいいます。例えば、論文集、一般書籍、雑誌等が挙げられます。また、「頒布」という言葉についても、あまり馴染みが無いかもしれませんが、「広く行きわたらせること」という意味で用いられます。
 従来は、「刊行物」として、活字印刷によるものだけが念頭に置かれていましたが、今日の情報化社会においては、他の情報伝達媒体が発達しており、マイクロフィルム、CD-ROM、光ディスク等も刊行物に含まれます。
 ところで、「刊行物」という用語自体、現代にそぐわない点もありますが、これは大正時代の特許法の用語をそのまま承継しているためです。その当時は、国内で頒布されたもののみを対象としていましたが、現在では世界中で頒布された刊行物に記載されている発明が審査の対象とされています。
 なお、外国における特許明細書等は、過去に刊行物性が問題となったこともありましたが、現在では、外国で公開された特許明細書に記載された発明については特許を受けられない点は争いのないところとなっています。
 以上のことから、研究開発を開始する際、もしくは特許出願をする際等においては、国内・海外の刊行物について詳細な先行技術調査を行うことが重要となります。また、別の観点からは、自ら論文発表を行うことによっても特許が受けられなくなってしまう点にも注意を払う必要があります。

弁理士 岡村 隆志

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