知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(33)

Q:他社の発明の効果を調べるため試験的に実施をしたいのですが、そのような場合でも特許権侵害となるのでしょうか?

A:他社の特許発明について、その効果等を試験するために、もしくは、その発明をステップとしてより良い発明の研究をするために、これを実施したいというケースは少なくありません。
 特許法が定める原則からすれば、権利者以外の者が許可なく特許発明の実施をした場合には、権利侵害となってしまいます。しかし、上記のような実施をすることは、技術の進歩に貢献するという側面が多分にあります。さらに、特許権者等の立場からみても、その後の市場における実施につながることとなれば、実施料収入が得られるといった利益が生じることもあります。
 これらの観点から、わが国の特許法においては、「試験または研究のためにする発明の実施に対しては、特許権の効力は及ばない」とする旨の規定が設けられています。つまり、試験的な実施をしても、特許権侵害とはならないということです。
 ただし、試験または研究のための実施と称して、できあがった製品を販売等してしまうと、「非侵害」と認められる「試験または研究」の範囲を超えてしまうこととなるので、注意が必要です。
 なお、関連情報として、特許法には、一時的に日本国内を通過する船舶や航空機において、特許侵害となる製品が搭載されていたとしても侵害とはならない旨の規定も設けられています。
 このように、「特許権」を取得すれば他者による全ての実施行為に対して100%権利行使が可能になるかと言うと、実際はそうではなく、権利行使が制限される場合が定められているのです。

弁理士 岡村 隆志

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