知財関連コラム

特許実務雑感70

 今回は、特許権侵害の際に抗弁として用いられる特許権の消尽について、BBS並行輸入事件の判決と共にご紹介します。特許権の消尽とは、特許権者又はその許諾を受けた実施権者が特許製品を国内で譲渡した場合には、特許権の効力はその後の特許製品の使用、譲渡等には及ばないとするものです。理由は、特許製品について譲渡するたびに特許権者の許諾を要するとすれば、円滑な流通が妨げられて特許権者自身の利益が害され、産業の発達も阻害されること、特許権者等から譲渡されて対価を受けた特許製品につき、流通過程から再度の対価を受ける二重の利得を認める必要性はないことがあります。この特許権の消尽についても様々な論点があり、譲渡地が国外である場合、特許製品が加工され部品交換された場合、間接侵害品を用いた特許製品の生産・譲渡等の場合などがあります。譲渡地が国外である場合については、特許権者と譲受人との間で特許製品について販売先ないし使用地域から日本を除外する旨を合意したこと、その旨を特許製品に明示している場合には、権利行使ができると判示されています。次に特許製品が加工され部品交換された場合ですが、特許製品と同一性を欠く特許製品の新たな製造に該当する場合に権利行使が認められる旨が判示されています(インクカートリッジ事件)。この場合、新たな製造に該当するかは、特許製品の属性、特許発明の内容、加工及び部材の交換の態様、取引の実情等が勘案されます。例えば、特許発明の本質的部分に修理や改造を加えた場合には、新たな製造に該当する可能性が高いと思われます。間接侵害品を用いた特許製品を譲渡した場合、黙示の許諾があったか否かで権利行使の可否が分かれる旨の判示があります。

弁理士 平井 善博

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