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ビジネスに役立つ商標  出願人と引用商標権者に支配関係のある場合

 商標登録出願した後、審査の結果、他人の類似の先登録商標(引用商標)が存在する場合、商標法4111号違反として拒絶されます。
 つまり、他人ではなく同一人の引用商標と類似であれば拒絶されずに登録になります。なお、他人と表現していますが法人も含んでいます。
 ところで、引用商標権者が自社の親会社又は子会社であった場合など、すなわち出願人と引用商標権者に支配関係が有る場合には、以下のような取り扱いによって4111号違反には該当しないものとされ、登録になります。
 支配関係がある場合とは、(1)議決権の過半数を有する場合、(2)①議決権の過半数を有していない場合でも資本提携の関係があり、且つ、②事業活動が事実上支配下にある場合、です。
 支配関係にあるかどうかの立証資料としては、(1)については会社四季報の写しなど公になっている株主構成が分かるもの、(2)①については発行済株式の10%以上50%以下を保有していること、②についてはその会社に役員を派遣し又はその会社の経営を恒常的に指導していること等を証明する会社案内、カタログ、定款、パンフレット等が必要になります。
 さらに、出願に係る商標が登録を受けることについて引用商標権者が了承している旨の証拠として、引用商標権者が、商標法第4条第1項第11号に該当するとした商標出願に係る商標が登録を受けることに了承した旨を記載した書類(陳述書)を提出することが必要です。
 なお、これらの取り扱いはあくまで類似の商標についてであり、同一の商標の場合は、支配関係があって引用商標権者が了承していても、登録を受けることはできませんので注意してください。

弁理士 傳田 正彦

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