知財関連コラム

特許実務雑感67

 侵害訴訟において、侵害論について審理が終了すると、損害論について審理が始まります。損害論に入る前に裁判官から心証が開示され、和解を打診されることも多い。また、侵害論の審理では、技術説明会が開催される場合があります。筆者の経験では、進歩性判断で「当業者の技術常識」なる主張がされた場合に、その妥当性を検討するため、開催された経験があります。技術説明会には、裁判官のほか、裁判所調査官や専任された専門委員が同席する場合が多い。技術説明会は法廷ではなく弁論準備室のような会議室で原告及び被告が同席のもので行われ、ここで裁判官や裁判所調査官よりいずれかに対して質問がされる。筆者の経験では、質問が集中した方が裁判官の心証形成が不利になっていると思った方がよいでしょう。侵害論で特許非侵害の心証が形成されれば、損害論に入ることはありませんが、特許侵害の心証が形成されると損害論に入ります。損害論に入ると、侵害行為と因果関係のある損害額の算定に入ります。損害賠償の根拠規定は民法709条です。同条に基づく損害賠償請求の要件は、①故意又は過失②権利侵害③損害の発生④権利侵害と損害の発生との間の相当因果関係⑤損害額を各々立証することになります。これらのうち、特許権侵害の⑤損害額の立証は困難であることから、特許法第102条に特例として算定の根拠規定が設けられています。第1は原告製品1個当たりの利益額に被告製品の販売数量(権利者の実施能力に応じた数量を超えない数量)を乗じた額、(販売数量のうち実施能力を超える数量については実施料相当額を請求可)、第2は侵害者が得た利益額、第3は実施料相当額の損害額を請求するものです。上記第1~第3のいずれかの算定方法にしたがって請求することになります。

弁理士 平井 善博

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