知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標  ヨーロッパにおける商標

 商標法は各国ごとに存在し、ある国で商標登録しようとするならばその国の商標法に基づいて手続きをし、その国で商標登録がされた場合にはその国の領域内で商標権の効力が生じます。
 一方、欧州連合(EU)に関しては、1件の商標登録でEU全体に商標権の効力が及ぶEUTMという制度があります。EUTMはEU知的財産庁(EUIPO)が管轄しており、手続きはEUIPOに対して行われます。EUIPOは、EU域内における意匠及び商標の登録に関する機関であり、特許に関しては別の機関によります。
 もしEU加盟国26か国に対して各国個別に商標登録しようとすると手間も費用も非常にかかりますが、EUTMという制度を使えば1件の登録でEU全体に効力が及ぶので手間も費用もかけずに済みます。
 EUTMにおける審査は識別性に関してのみ行われます。つまり先登録の他人の類似商標に関しての審査は行われません。識別性の審査とは、出願された商標が、指定商品の普通名称であったり、商品やサービスの品質や質を表しているものであったり、原産地表示や地理的表示によって保護されているもの等の場合には拒絶するということです。
 先登録の他人の先登録が有った場合にはどうなるかというと、異議申し立て期間の間にその他人が異議申し立てをしてくるかどうかということになります。
 異議申し立ては公告から3か月以内にすることができ、異議申し立て後は2か月間(最大22か月まで延長可)のクーリングオフ期間が設定されます。このクーリングオフ期間でその他人と出願人とで、混同を防止するために出願人側の指定商品を減縮する等の話し合いが行われます。

弁理士 傳田 正彦

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