知財Q&Aコーナー(81)
Q:特許法と独占禁止法との関係について教えて下さい。
A:特許権は排他的な独占権として他人の競業を排除する点で、形式的には私的独占の一種であるとみることもでき、独占禁止法上問題であると考えられない訳でもありません。
しかしながら、特許法が産業の発達を目的とし、また独占禁止法が経済の健全な発達を目的としている点において、そもそも両者は矛盾するものではありません。
そこで、両者から生じ得る問題を解消すべく、独占禁止法において、「特許法による権利の行使と認められる行為には独占禁止法の規定を適用しない」旨が規定されています(独占禁止法第21条)。なお、著作権法、実用新案法、意匠法、商標法に対しても同様です。
ただし、あくまでも「権利の行使」は正当なものであることが前提であり、場合によっては、独占禁止法上の「不公正な取引方法」に該当することも起こり得ます。例えば、ある技術について特許権を有する者が、他の事業者に対し当該技術の利用に関するライセンスを行わない行為や、ライセンスを受けない状態で当該技術を利用する事業者に対して差止請求訴訟を提起する行為は、特許権の行使とみられる行為であり、通常はそれ自体では問題となりません。一方、これらの行為が、知的財産制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる場合には、正当な権利の行使とは認められません。したがって、一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、私的独占に該当する、つまり独占禁止法に違反することとなる旨が公正取引委員会の指針において示されています。
(参考:公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」)
弁理士 岡村 隆志