知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(49)

Q:開発の失敗成果について特許が取得できるでしょうか?

A:これについては、開発目的を達成できないとして開発者が断念した手段(失敗例)を発明と認めることができるか否かという問題であると考えます。
 「開発が失敗」したということは、すなわち開発目的を達成できないまま終了した状況であるということになります。したがって、目的達成手段としての認識、すなわち、発明の成立要件であるところの「自然法則」についての認識を欠くものとなるため、特許を受けることはできません。
 しかし、その後に、同一の手段を取り上げて目的を達成できることを明らかにすることができれば、その時点で当該手段は発明として成立することになるため、特許性が生じることになります。
 ところで、そのような失敗例は、特許こそ取得できませんが、実は不正競争防止法において保護される対象となっています。なぜなら、同業他社から見れば、同じ失敗による損失を回避できる点において、有益な技術情報となるからです。
 ただし、そのような情報が不正競争防止法による保護を受けるためには、公に知られていないこと、秘密管理下におかれていること等が要件となります。つまり、トレードシークレットとして管理されている限り、万一、他人が不正にその情報を取得・使用したとしても、その行為を規制することができます。
 したがって、失敗例も重要技術情報としてきちんと管理しておくべきものと考えられます。
(参考文献:特許法概説/吉藤幸朔著)

弁理士 岡村 隆志

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