特許実務雑感91
今回はAI技術を利用した特許出願書類の作成について私見を述べます。巷では、特許出願書類作成を例えばChatGPTのようなオープンAIを利用して行うことを試みようとしている弁理士さんがいるようです。しかしながら、私はこのような風潮は、弁理士の実務能力を衰退させるだけでなく、発明の保護にもつながらないため、限定的に利用すべきと考えます。先ずAI技術は、膨大な蓄積されたデータの中から、特定のデータを抽出したり、要約したりするのには向いていると思われます。よって、先行技術文献調査などには好適と言えます。しかしながら、発明者が創作した新規かつ困難性がある発明を、どのような背景から説明文として作成することができるでしょうか?弁理士が行っている出願業務は、発明者が認識する背景技術(技術常識)や公知となっている先行技術の課題を把握して、この課題を解決する手段としての発明を具体例と共に的確に説明することにあります。これらをAI技術が行なうことができるとしたら、その発明に新しさや困難性があるのでしょうか?むしろ、PCに公開前の発明データを入力した時点で、履歴が残ってしまい、データとして吸い上げられてしまう危険性すらあります。よって、将来権利化を目指す発明提案を安易にAI技術を利用して出願書類を作成することは避けるべきです。また、弁理士が発明をいかに捉え表現するか、実務力を鍛える貴重な機会を失うことにもつながります。AI技術の利用は、未知の領域の技術を把握するのには向いておらず、あくまで、既知の技術の把握に限定して利用すべきと考えます。このような、安易なAI技術の利用を行なう代理人は、実務能力が疑わしく、コンプライアンス上も問題ありと言えます。
弁理士 平井 善博









