知財関連コラム

特許実務雑感89

 私がまだ新人のころ、特許請求の範囲の記載についての解釈について疑問を抱いたことについて振り返ってみたい。特許請求の範囲というのは、権利取得を希望する発明を簡潔に記載する書面である。発明の単位も全体装置である○○装置、装置の一部である○○機構、部品である○○部材…など、様々な大きさで存在する。拒絶対応である装置発明の出願人が、他社引用文献記載の装置発明に対する反論の際に意見書で主張していたのは、引用文献には、駆動源や駆動伝達機構の記載がないとか、発明が完成していないとか…いわゆる記載不備を指摘するものがあったと記憶しています。このとき、審査官の見解はどうであったかというと、「装置発明であるから、通常駆動源や駆動伝達機構はあるものと解釈される」とはっきりと一蹴していました。すなわち、装置発明のような複数の構成要素からなる発明においては、当業者の常識として通常備えている構成要素について逐一記載する必要はなく、発明の特徴に関する構成要素を記載して特定すればよいとの、認識を強く持ったということがありました。構成要素がシンプルな○○部品や○○機構などの発明については、構成要素を項目列挙するだけでも特定しやすいですが、より複雑な装置発明となると、構成要素を項目列挙しただけでも数が多すぎて特許請求の範囲を簡潔に記載することができません。よって、装置発明などの複雑な発明の場合、通常備えているであろう構成要素についての記載は不要であり、より慎重に発明を特定したいのであれば、プリアンブルの記載を利用して、例えば「駆動源を起動して〇〇する□□装置であって、」のような記載をすることにより、記載不備に関する疑義は生じることはないものと思われます。

 

弁理士 平井 善博

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