ビジネスに役立つ商標 国や地方公共団体の標章と同一又は類似の商標
商標登録出願された商標の不登録事由のうち、商標法第4条第1項第6号に「国、地方公共団体、これらの機関、非営利の公益に関する団体等を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」は登録を受けることができないと規定されています。
かつての事例で、ある企業が第6類(建築用の金属製材料等)、19類(セメント及びその製品等)、21類(清掃用具等)を指定商品として文字と図形からなる商標を商標登録出願しました。特許庁の審査では、この商標は宮崎県日南市の著名な市章と類似しているということで拒絶し、拒絶査定不服審判でも同じ結論が出ました。出願人は審決取消訴訟を提訴し、日南市の市章は著名ではない旨、商標は日南市の市章とは非類似である旨を主張しました。
知財高裁では、次のように判断し、特許庁の審決を覆しました。
日南市の市章は公共施設、ホームページ、広報用パネル、マンホールの蓋などに使用され、イベントの際にメインとなる舞台や調印式などの背景に市章を表した日南市旗が掲げられていることは認められるが、このように使用されているからといって、本願商標の指定商品の取引者、需要者が一般に目にするとは認められない。また、本願商標は、文字と図形の組み合わせであり、外観において本願商標の図形部分と日南市章は類似するものの、本願商標が文字部分から特定の称呼を生じて企業名としての観念を生じるのに対し、日南市章は特定の称呼、観念を生じるものとは認められないから全体として類似するとはいえない。
このように、著名かどうかを判断することは極めて難しい事ですが、指定商品の取引者等において著名かどうかまで検討することが必要になります。
弁理士 傳田 正彦









