知財Q&Aコーナー(83)
Q:「出願変更」という制度があると聞きましたが、どのようなものでしょうか?
A:「出願変更」とは、出願内容の同一性を保持しつつ、例えば、特許出願であれば、実用新案登録出願または意匠登録出願に形式を変更することをいいます。
特許と実用新案については、保護対象が同質であるため変更が可能であることもうなずけますが、物品の外観形状を保護する意匠についても可能とされているのは、その形状自体が同時に特許性を有する場合があることが想定されるためです。
したがって、上記の三法域(特許、実用新案、意匠)における相互間で出願形式を変更する制度が設けられています。ちなみに、商標登録出願への変更制度というものはありません。
この出願変更制度を活用できるケースとして想定されるのは、先ず、出願形式を誤ってしまった場合が考えられます。その他には、実用新案登録出願を行って登録された後で(以前、紹介した通り、現在の実用新案は無審査で登録されます)、当該技術の重要性が増加したことに伴い、特許出願に変更して長い期間の保護を目指そうとする場合が考えられます。あるいは、これとは逆に、特許出願を行って審査を受け、拒絶理由が通知された際に、他の法域(すなわち、実用新案もしくは意匠)に変更することで権利化を目指そうとする場合が考えられます。さらにこのような場合を想定し、意匠登録出願への変更も視野に入れて、特許出願の当初から意匠出願に必要となる6面図を記載しておく方法もあります。
ただし、既に特許権として権利の設定登録がされてしまったものは対象外となります。また、権利になる前であれば、いつでも手続が可能という訳ではなく、一定期間に制限されています。
弁理士 岡村 隆志