ビジネスに役立つ商標 無効審判と除斥期間について
商標法では、登録後の商標権に対して利害関係人が、商標権の無効を請求できる無効審判という制度があります。商標権が過誤により登録になってしまった場合、このような商標に独占排他権を認めておくことは妥当ではないという理由により、こういった制度があります。利害関係人というのは、当該商標権者から商標権の侵害であることを訴えられている者などが例として挙げられます。
無効理由としては、審査の段階における拒絶理由とおおよそ同じであり、識別性・独占適応性が無いなどとする違反(3条)、先登録商標の存在やその他様々な不登録理由(4条)など様々あります。無効審決が確定しますと、その商標権は初めから存在しなかったものとなります。
なお、これらの無効理由のうち、識別性・独占適応性が無いなどとする違反(3条)、他人の肖像又は他人の氏名などを含む(4条1項8号)、先登録商標の存在(4条1項11号)、などの無効理由については、商標権の設定登録の日から5年経過後は、無効審判を請求することが出来ないと規定されています。この5年の期間を除斥期間と呼んでいます。本来登録させるべきでなかった商標であっても、一定の期間、無効審判の請求がなく平穏に経過したときは、その既存の法律状態を尊重し、維持するために無効理由たる瑕疵が治癒したものとして扱うことが妥当であると考えられるためです。
なお、除斥期間の適用がされないものとして、公益的な見地による無効理由があります。例えば、国旗、菊花紋章、勲章、国際機関を表示する標章、赤十字の標章、国や地方公共団体を表示する標章などと同一又は類似の商標の場合に対しては除斥期間の適用はなく、商標権の設定登録の日から5年経過後であっても無効審判の請求が可能です。
弁理士 傳田 正彦