知財関連コラム

特許実務雑感63

 侵害論(侵害の成否)において、対象製品が特許発明の構成要件に該当するか否かは、特許請求の範囲の文言解釈が妥当であるか否かによります。権利者側は、一般に広く解釈する傾向があり、被告側は狭く解釈する傾向があります。例えば特許請求の範囲に「○○手段」なる表現がされていたとすると、○○手段と言う文言は一般に広く解釈されるため、構成の具体的な内容が理解し難いと思われる。こんなときは、発明開示の代償として特許権が付与される制度趣旨から特許請求の範囲の解説欄である明細書及び図面を参酌して権利者が意図する範囲を判断せざるを得ません。特に権利者が明細書中で○○手段(…をいう)と定義している場合には、その定義を離れた範囲まで権利範囲と主張することは、発明開示の範囲を超えるものであって、許されないものと解する。特に、物の発明であるにもかかわらず、作用機能的な表現で特定されている特許発明(例えばプロダクトバイプロセスクレーム)の場合、本来は物同一説にしたがって、物として対比した場合、公知の物と同一であれば拒絶されているはずであるが、当業者にとって明細書及び図面の記載或いは技術常識等を参酌して発明内容が特定できれば、機能的表現が用いられていても発明は明確であるとして特許される場合があります。このような場合でも、明細書の記載や図面の記載を参酌しながら発明の構成要件を丁寧に洗い出して対比することが求められます。尚、米国では、機能的クレームは、明細書に記載された構造、材料、作用これらと等価な範囲として解釈されるという明確な規定があり、解釈がぶれることはありません。

弁理士 平井 善博

トップへ戻る