知財関連コラム

ビジネスに役立つ商標  香港における商標

 中国でのビジネスのために中国で商標登録をされている企業は多いですが、食品関係の日本企業は特に香港への輸出が多い傾向があります。
 1997年に香港の主権がイギリスから中国に返還されましたが、一国二制度というやり方で、知的財産権に関しては中国と香港は別の法律になっており、香港での商標登録出願を審査する機関は香港知識産権署であり、中国での商標登録出願を審査する機関は国家知識産権局商標局です。
 このように、中国(本土)での商標登録だけでは香港にはその商標権が及ばないので、香港と取引のある企業は、香港で商標登録をする必要があります。
 香港の商標法は、返還後に法改正はありましたが、イギリスに主権があった当時の商標法を引き継いでいます。英米法系の商標法では、使用主義の考え方が強く残っており、米国などでは使用証拠を提出しなくてはなりませんが、香港の場合は使用証拠の提出の必要はありません。
 香港の商標制度は、その審査において識別性の審査(絶対的拒絶理由)、先登録商標との同一類似性の審査(相対的拒絶理由)が行われることは、日本を含む他の主な国と同様です。また、先登録の類似商標権者から共存に同意する旨の同意書が得られれば登録可能となるコンセント制度も採用されています。
 香港で特徴的な制度では、連続商標というものがあり、その本質的部分が互いに類似しており、商標の同一性に実質的な影響を及ぼさない識別性のない部分のみが相違している2以上4までの商標をいいます。例えば、カラーの商標とモノクロの商標を1件で出願するとか、繁体字の商標と簡体字の商標を1件で出願することができます。

弁理士 傳田 正彦

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