知財関連コラム

特許実務雑感59

 特許侵害警告への対応についてお話します。権利者側からは概ね2週間程度の回答期限付きで送られてくることが多いですが、被疑侵害者側としては、権利内容の確認と対象製品等の対比に時間を要することや現在抱えている仕事の納期等の理由から、1か月程度の猶予を頂く場合が多いです。このときの検討結果次第で、その後の対応が決まってきます。侵害論を検討した結果、非侵害の結論が得られれば、その旨を回答します。侵害に相当するが正当権原や正当理由がある場合も同様です。法的根拠のない内容であれば無視もあります。また、権利者側が侵害訴訟を提起するおそれもありますから、どこまで争うのか(譲歩の余地はあるのか)、訴訟費用や時間、営業展開への影響等を考慮して対応を決める必要があります。訴訟に至らずに和解で解決するメリットは以下の通りです。早期解決ができる、費用負担が比較的少ない、事案に即した柔軟な解決が図れる、争いの事実や内容が第三者に知られずに済む等があります。デメリットとしては、権利者が強硬姿勢の場合には、訴訟以外で解決できないこと、裁判なら勝訴できた事案でも、譲歩(例えば被侵害者から権利者への解決金の支払い)が必要になること、があります。この被疑侵害者の譲歩が納得いかないと思われますが、権利者側も振り上げた拳を下すのに相応の理由が必要となる上に、和解金を支払ったとしても、訴訟提起されるより費用は低廉に抑えられます。権利者と被疑侵害者との間で合意した場合には、合意書(和解書)が交わされることが多く、合意書には当事者の特定、権利と対象製品等の特定、合意内容(和解金の支払い等)、清算条項(当該合意書に定める以外に債権債務なしを確認する条項)等が記載されます。

弁理士 平井 善博

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