知財関連コラム

特許実務雑感57

 特許権侵害の攻撃及び防御についてお話をします。先ず権利者側(攻撃側)が取り得る手段について説明します。ここで、特許権侵害の成否についておさらいをすると、「正当権原なき第三者が業として特許発明を実施していること」(特68条)に該当するか否かを検討します。先ず、第三者が自己の特許権侵害を侵害しているか否か、事実確認をしましょう。正当権原(実施契約、先使用権等)の有無も確認します。侵害の事実が判明するのは、例えば、店頭、ネット等で開示された他社製品情報や競合他社が出品する国内外の展示会というケースが多いように思われます。とりあえず、他社実施品を特定するための製品名、型番等を押さえましょう。そして、侵害品やその構造や動きがわかる製品情報を入手することが必要です。そのうえで、「特許発明の実施」に該当するか否か、即ち実施品が特許発明の技術的範囲に入るか否かの確認をします。例えば、特許発明Xが「A+B+Cの構成要件を含む発明」とすれば、実施品Yが「A」又は「B」のみ含む場合、「A+B」又は「A+C」を含む等の場合には、権利侵害と言えません。「特許発明Xの実施」というためには、特許発明Xの構成要件「A+B+C」のすべての実施を言い、一部一致する場合には原則として非侵害という考え方をとります(権利一体の原則)。例外は何かと言うと間接侵害と、均等侵害ということになります。権利者自ら検証して判断してもよいですが、弁理士等による判断を仰いで実施品Yが特許発明Xの技術的範囲に属するか否かの見解を確認し、その見解を侵害鑑定書として残して訴訟資料として保管しておくことも有効です。ここで、実施品Yが特許発明Xの実施に該当せず或いは正当権原が有れば、それ以上の話は進め難くなります。

弁理士 平井 善博

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