知財関連コラム

特許実務雑感45

 以前に特許出願から意匠登録出願への変更について説明しましたが、技術を保護する特許から物品の外観を保護する意匠に変えることに意味があるのか、と思われる方もおられるかと思います。しかしながら、製品開発をしたときに、開発段階で生み出される特許、実用新案等の技術的課題を解決する創作と、最終製品を送り出すときに生み出される製品の外観デザインは、時期を異ならせて創作されるものです。仮に技術的な工夫がありふれていても、外観デザインが斬新であれば意匠で保護することが有効と思われるからです。なぜなら、多くのヒット商品は、複数の権利の併用(知財ミックス)で保護されることが多いという実態があります。特許権は最大限生きて出願から20年です。これに対し意匠は出願から25年と意外と長く存続します。よって、特許出願をしてから意匠出願をすれば、意匠権の方が長く存続するケースが多々あります。また、意匠出願の審査は年2回のバッチ処理で全件審査が行われ、審査期間も平均で6か月~8か月ですので、早期権利化が可能です。意匠登録しても、所詮技術の保護にならないじゃないか?と思われがちですが、特許権の存続期間が終了してもそのデザイン自体は世の中に認知されていますから、同業他社は意匠権が存続していれば外観上同一又は類似する競合品を出し難くなります。特に意匠法には、類似するデザインを関連意匠として保護する制度がありますから、類似するデザインを複数出願して関連意匠として権利化することで、デザイン上の保護範囲は本意匠と同一又は類似する範囲のみならず関連意匠と同一又は類似する範囲にまで広がります。デザインを新たに生み出すだけでも時間と費用がかかりますから、同業他社に対する牽制効果は十分期待できるものと考えます。

弁理士 平井 善博

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