知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(35)

Q:特許制度に関して、「先願主義」と「先発明主義」という言葉を聞きましたが、どのような相違があるのでしょうか?

A:特許を付与する制度に関して、日本等では最も早く出願した者に特許を付与する「先願主義」を採用しています。これに対して、米国等では最も早く発明した者に特許を付与する「先発明主義」を採用していた時代がありました。
 相違点として、「先発明主義」のもとでは、最先の発明が保護されることになるため、出願を急ぐ必要がないという長所があります。ただし、その結果として、発明を長く秘蔵しようとする傾向が生じます。また、実際に発明の先後を決定すること自体が困難であるとともに、先後を決定のための手続(抵触審査手続)が極めて複雑になるという短所があります。さらに、一度特許が付与されても、抵触審査手続によって後から覆されることもあるため、権利が不安定になるという短所もあります。
 かつては、「先発明主義」を採用していた国も複数ありました(例えば、カナダ、フィリピン等)。しかし、権利の安定性の観点から、徐々に「先願主義」への移行が進み、世界中において最後まで「先発明主義」を採用する国として残ったのは、米国1国でした。
 その米国に関しても、「先願主義」へ移行すべきという議論が長きにわたってなされた後、2011年に特許改革法(リーヒ・スミス米国発明法)が成立して、「先発明主義」から「先願主義」への移行が図られました。これにより、「先発明主義」の特許制度を有する国がなくなったと言えます。
 ただし、「先願主義」と一口に言っても、国ごとに特許制度の細部が相違する場合が少なからずあるため、実際に出願をして特許権の取得を目指す場合には注意が必要です。

弁理士 岡村 隆志

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