知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(32)

Q:まだ特許出願を行っていない発明品(製品)に「特許出願中」と表記して展示会で展示を行ってしまいましたが、何か法律上の問題が発生するでしょうか?

A:特許法には、特許を受けていない発明に対し、「特許表示」又は「これと紛らわしい表示」を付する行為や付したものを展示等する行為を禁止する旨が規定されています。ここで「特許表示」とは、例えば「特許第〇〇〇号」のように、あたかも特許を取得済みであるかのように偽った表示のことをいいます。
 それでは、まだ出願を行っていない発明品に「特許出願中」と表記して展示会で展示をする等の行為は、上記の「特許表示」又は「これと紛らわしい表示」に該当するでしょうか。
 実は、この問題についての明確な結論はなく、「紛らわしい表示」には該当しないとする説が通説とされています。しかしながら、これとは反対の学説もあります。また、過去には、「該当する」との判決が出された裁判の例もあります。
 したがって、完全に違法行為ではないと断定することができませんので、やはり、出願を行っていない状態で「特許出願中」なる表示をする行為はすべきではないといえます。
 なお、特許法においては、このような虚偽の表示に関する規定に違反した者に対して、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられる旨の罰則規定が設けられています。また、行為者を罰するほか、所属する法人に対しても1億円以下の罰金刑が科せられる旨の罰則規定が設けられています。
 さらに、「虚偽の表示」に関する罰則は、特許法だけではなく、実用新案法、意匠法、及び商標表においても同様の規定が設けられていますので、同じように注意することが必要です。

弁理士 岡村 隆志

 

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