知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(30)

Q:共有特許権について、他の共有者の同意を得なければならない場合としてはどのようなものがあるでしょうか?

A:「特許権」は財産権ですので、複数の者(企業等)によって共同所有(以下、単に「共有」と言います)をすることができます。しかしながら、特許権の対象となっている「発明」は、土地・建物のような「有体物」と相違して、形の無いいわゆる「無体物」である点において事情が異なります。すなわち、実際上占有ができないものなので、他人との共有特許権の取り扱いについては、特許法上、民法の特則にあたる規定が種々設けられています。
 具体的には、自己の持分権であっても、他の共有者の同意を得なければ勝手に処分ができない場合が発生します。例えば、持分権を譲渡する場合や、質権を設定する場合が挙げられます。ちなみに、ここでいう「譲渡」には、相続による承継などは含まれません。
 その他に、第三者に対して実施権を許諾するような場合も同様であって、他の共有者の同意が必要となります。ただし、下請け会社に実施をさせる場合には、権利者自身の実施に他ならないため同意は不要と考えられます。なお、自己の実施や共有者の実施に関しては、実施契約という形でそれぞれの実施に関する条件を明確化しておくことが推奨されます。書面で取り交わしておくことによって、無用なトラブルの発生を防止できるためです。
 上記とは反対に、同意が不要の場合としては、差止請求や損害賠償請求のような権利行使を挙げることができます。これらは各共有者が自己の持分権に基づき単独で行うことができることと解されています。
 いずれにしても、以上のような制約を受けないようにするためには、特許権を単独で所有することが望ましいと言えます。

弁理士 岡村 隆志

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