知財関連コラム

知財Q&Aコーナー(26)

Q:複数の関連する発明をしたのですが、一つの願書で出願できる範囲を教えて下さい。

A:従来は、それぞれの発明ごとに出願しなければならないとする「一発明一出願主義」が採られていましたが、開発の成果は多様な形で密接に関連する一群の発明として得られる場合が多くなっており、これらの十分な保護を図り、また出願手続を簡素化する必要からも、相互に一定の技術的関係を有する複数の発明は一つの願書で出願できるように改められました。これによって、出願人の手続簡素化と特許庁の審査効率化が図られることとなった訳です。
 特許法においては、一つの願書で出願できる場合、つまり、二つ以上の発明が一定の技術的関係を有する場合を、発明の「単一性」を満たすと言います。
 具体的に、発明の「単一性」を満たすには、対象の発明が「同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する一群の発明」に該当しなければならない旨が特許庁の審査基準に示されています。ここで、「特別な技術的特徴」とは、「先行技術に対する貢献、すなわち、先行技術との対比において発明が有する技術上の意義」と定義されています。簡単に言いますと、先行技術とは異なる新しい特徴点ということになります。
 したがって、そのような新しい特徴点が、特許請求の範囲に記載される全ての発明において共通事項として含まれていれば、一つの願書で出願できる範囲を満たしていると認められます。
 ちなみに、「単一性」を満たさない複数の発明を一つの願書で出願してしまった場合には、審査過程で拒絶理由通知が出されます。相互に関連の無い複数の発明を一つの出願として認めてしまうと、出願費用面等において、正当に出願を行っている者との間で不公平が生じてしまうことになるからです。

弁理士 岡村 隆志

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