知財関連コラム

特許実務雑感31

 不正競争防止法改正の続きを説明する。限定提供データの保護規定は、従前から規定されていた営業秘密の保護の規定にかなり似た規定ぶりとなっている。但し、限定提供データの違法取引には刑事罰の適用がないなど、救済措置には保護の軽重の相違がみられる。思うに、営業秘密はそれ自体経済的価値の高い情報であるのに対し、限定提供データは、それ自体は経済的価値が低いデータの集合体であることに基づくと思われる。不正競争防止法は、特許法のような保護対象があるわけではなく、事業者間の公正な競争、国際約束(例えばパリ条約)の的確な実施を確保するため規定された行為規制法である。
 次に、(1)技術的制限手段の効果を妨げる行為(プロテクト破り)に対する規制強化がある。保護対象に影像・音の視聴・プログラムの実行の他に、情報(電磁的記録に限る)の処理が追加された。情報にはAI深層学習に用いられるデータ、PCゲームのセーブデータ等がある。(2)技術的制限手段の効果を妨げる行為に指令符号の譲渡・引き渡し等が追加された。例えば、OSソフトのシリアルコードや暗号解除キーの販売禁止などがある。(3)技術的制限手段の効果を妨げる行為にサービスを提供する行為が追加された。例えば、TVチューナを改造し、有料放送の視聴可能とするサービスの提供などがある。(4)試験研究目的でのサービス提供、指令符号の譲渡等は適用除外となる点に留意されたい。施行日は平成301129日である。更には、特許法改正と同様に証拠収集手続きの強化が適用される。1)インカメラ手続を証拠書類提出の必要性判断についても導入され2)インカメラ手続には裁判所の他に、技術専門委員の関与が認められる。施行日は、令和1年71日である。

弁理士 平井 善博

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