知財関連コラム

特許実務雑感29

 ここで、2018年に成立した特許法改正の概要について説明する。(1)新規性喪失の例外規定の期間(グレースピリオド)延長である。従来は、特許法及び意匠法では、出願内容の新規性喪失から6月以内に出願すれば救済されていたが、改正後はいずれも新規性喪失から1年以内に出願すれば救済される。施行日は201869日以降の出願から適用されている。例外規定の期間は米国と同様の制度となった。(2)中小企業等の審査請求費用・特許料等一律半減である。現行は、対象となる企業が小規模企業等に限定され、軽減規模もまばらで、証明書の提出も面倒であったが、改正後はすべての中小企業が対象となり、軽減規模も原則半減、証明書の提出も簡素化されている。施行日は平成201941日である。(3)インカメラ手続の拡充である。現行は、裁判所は、特許権者等の申立てにより被疑者に対して侵害の立証に必要な書類等の提出を命ずることができ、被疑者が提出を拒むことに正当な理由があればこの限りでなく、この正当な理由の有無をインカメラ手続で判断していた。改正後は、特許権者等の申立書から証拠提出の必要性の判断についてもインカメラ手続を導入され、インカメラ手続には裁判所の他に、技術専門委員(中立の第三者)の立ち合いが認められる。実用新案法、意匠法、商標法にも準用され、施行日は20197月1日である。(4)判定制度の改善である。現行は判定に係る書類は、閲覧請求により公開され、営業秘密を保護する措置がなかった。改正後は判定に係る書類であって、当事者から営業秘密が記載された旨の申し出があったものは、閲覧請求の対象から外される。実用新案法・意匠法・商標法・不正競争防止法にも準用され、施行日は201971日である。

弁理士 平井 善博

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