知財関連コラム

特許実務雑感25

 特許出願日より1年という期間の話の続きになりますが、この期間に検討しなければならないのが、外国出願をするか否かである。国内優先権主張出願と同様に優先期間が適用される期間だからである。外国出願する場合の方法としては3つあって、(1)直接外国に出願する方法(直接ルート)、(2)日本出願を基礎としてパリ条約に基づく優先権主張出願する方法(パリルート)、(3)特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を優先期間内にする方法(PCTルート)、がある。面倒な話になって恐縮だが、外国出願する場合にも優先権制度があって、これも基本的には、第一国の出願と重複する事項については、新規性・進歩性等の審査の基準が第一国出願時で判断する制度である(所謂第一国出願時に得られたであろう利益を第二国出願で享受する制度)。パリルートとPCTルートの違いだが、簡単に言うと翻訳文を準備する期間が異なる。パリルートは現地の言語に翻訳して出願する必要があるが、PCTルートは、日本の特許庁が受理官庁であるので、日本語で出願でき、翻訳文は英語で足り、優先日(第一国出願日)より原則30か月経過前に準備すればよい。よって、出願により1年(優先期間)経過直前に外国出願を決断した場合、翻訳文が間に合わないケースがでてくるので、PCTルートで出願するしかない場合もある。パリルートは、直接その国の言語で出願しますが、PCT出願をすると、必ず国際調査報告が作成され、権利化する国へ手続移行する前に特許性を予測できるという利点もあります。日本と外国の審査経過を切り離して考える場合、PCT出願すれば、翻訳文を準備したり、出願国を選択したりするまで時間的な猶予があるので、対応しやすいかもしれません。

弁理士 平井 善博

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