知財関連コラム

特許実務雑感23

 特許出願から特許権が発生するまでの手続きの流れについてお話します。特許出願すると、その内容は原則として1年6月経過後に公開されます。公開公報に、特許出願の内容が掲載されます。例外として、出願人が早期公開請求すれば1年6月経過前に早期に公開することも可能です。では、出願内容を何故公開するかというと、出願内容が公開されないことによる弊害、同一発明について重複研究、重複投資、重複出願を防ぐためである。この出願から公開までの1年6月という期間は、出願内容をブラックボックス化できる期間なのであるが、同時に改良発明や関連発明について出願する期間と考えたほうが良い。公開されてしまえば、自社技術であっても公知技術として引用され、新規性・進歩性を否定する先行技術文献となり得るからである。公開されるが故に出願をためらう気持ちもわかるが、発明開示の代償として独占権たる特許権を付与して一定期間独占排他的な地位を保証しているのである。もちろん、製品を見ただけでは判別できないノウハウ(特に製法に多い)は、公開されてしまえばその価値が消失するおそれがあるため、出願を控えて秘密管理する選択もよいでしょう。出願公開は第三者に対して出願発明の模倣をするきっかけとなり得るからです。ただし、出願公開に伴う模倣リスクから救済するため、出願公開から特許権発生までの間の第三者の発明実施行為については、警告を要件として補償金請求権が認められます。出願公開から特許権発生までの間の第三者の模倣盗用から出願人を救済するためです。自社技術を第三者に使用許諾してビジネス展開する場合、契約のみならず特許権という武器を併用したほうが不本意な技術の拡散を防ぐうえで有利に展開できると思われます。

弁理士 平井 善博

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